逐電屋 藤兵衛 「首切り館」より

感想

PCエンジンで発売された、コマンドを選択して物語を進めていくタイプのアドベンチャーゲームです。

ときは江戸時代、ところは江戸。
主人公はそこで暮らす浪人の藤兵衛。
しかし実は「逐電屋」、誰かを逃がす、「逐電」させるのを生業としています。

このタイトルを見たときに「逐電」という言葉を知らなかったため、造語なのかと思いましたがそんなことはもちろん無く(苦笑)、 「逃げて行方をくらますこと」のようです。

主人公は、普段は軽口をたたいてお茶らけていても、決めるところはビシッと決めるそんな男で、個人的には好きです。
スナッチャーのギリアンやCITY HUNTERの冴羽僚、銀魂の坂田銀時、蛭田昌人作品や剣乃ゆきひろ作品における主人公など挙げればきりがありませんが、そんな感じの主人公です。

登場人物は主人公の他にも魅力的で、隠密活動の隠れ蓑で始めた俳句が有名になってしまった松尾芭蕉や、 目明し(岡っ引き)なのにお上のやり方に思うところがあり独自に捜査をするひょう吉、齢17にしてかなりの使い手な陰陽師の瑠璃。
そして、魅力的とは少し違いますがやはりあいつ、というか「来留須」の正体はびっくりしました。
まさか、「そこ」でつながっていたとは!!

ある「儀式」のために一人の娘がさらわれ、その娘を探すため(江戸から逐電させるため)に松尾芭蕉から依頼を受けた主人公「藤兵衛」は捜査に乗り出します。
捜査を進める進めるにつれ、また一人の娘の行方が分からなくなり、さらにもう一人も...。
事件の裏には「ころびばてれん」の男が浮かび上がり...、
というふうに物語は進んでいきます。

「お犬小屋」が出てくるので、時代は5代将軍徳川綱吉の頃なのかと思われます。
振袖火事(明暦の大火 1657年3月)、島原の乱(1637年)が深く絡んだ物語に、詳しくないけれど歴史好きな私としてはものすごく興味をそそられました。

また、「せんそう寺(浅草寺)」「日本橋」「車坂(藤兵衛曰く「上野の辺りだな」)」「とみがおか八まん(富賀岡八幡)」など、実在する地名も現れます。
ちなみに、「とみがおか八まん」で検索したら「富岡八幡」ばかり出てきたので、「が」は「ヶ」、つまり昔は「富ヶ岡八幡」と呼ばれていたのかと思いましたが、 それとは別に「富賀岡八幡」というのが存在するので多分こちらの事なのかな?

繰り返しになりますが登場人物が皆魅力的で、その中でも特に「瑠璃」がお気に入り。
実力はあるし可愛いし、でも「小娘」と侮っていると痛い目にあいます(笑
おじいちゃん(父親=玄心)と2人で暮らしていたからあんな口調になったんだろうなぁ、というのは想像に難くはないですが、 かなり浮世離れした生活を行っていたんだな、と。
しかし彼女はその修行も嫌々ではなかったようですし、何より最後の瑠璃のあの表情、そして藤兵衛のあのセリフ、
彼女も普通の女の子だったんだと
ほっとしました。
可愛い!

......話がそれてしましたが、松尾芭蕉が隠密だったとか、来留須の存在とか、振袖火事とか、
もちろん創作なのはわかるのですが、色々とつながっていて、本当にシナリオがうまいなぁと思いました。

が、しかし!!

シナリオは素晴らしいのですが、作りが......。
ハマリはまだいいんです、「太陽の神殿」のように構造上のものだったら。
これをしないとこれが出来ません、というのであれば分かるのですが、そうではなく、単純に「ミスだろこれ...」というものが気になりました。

「右目」「左目」を間違うってどういうこと!?

遺体の人相書きを書くときに、向かって「左」ではなく「左目」はどれ?
とういう設問があるのですが、これって実は「右目」のことで、「右目」はどれ?と聞かれたときには実は「左目」の事で、 ここはバグでもなんでもなく、単純に凡ミスだよなぁと思ってしまいます。
「左目は?」と聞かれて選択したパーツが「右目」として置かれるので、質問がおかしいのはわかるのですが、そういう問題ではありません。
他にも、先にAに行ったらBで情報が聞けない、というか人相書きが書けないというのはテストプレイ不足だと感じました。

それさえ無ければ文章もシナリオも面白いし、登場人物も魅力的、絵も迫力があるし、音楽もその場にあっているもので素敵...
なので、なので、非常に残念に思いました。