夢幻の心臓 2

感想

前作「夢幻の心臓」に続き続編の「夢幻の心臓2」をプレイしました。

前作と比べてボリュームがあるのはもちろん、とにかく親切です。
ここでいう「親切」とは「ぬるい」ではないということ、特にゲーム序盤の戦闘バランスはかなりシビアです。 前作よりもかなりゆるくなったとは思いますが、序盤でもすぐにゲームオーバーになれます。

前作は独り旅でしたが、今回は最大5人パーティで冒険が出来ます。
しかも、種族も複数あり、 人間の他、ファンタジーでお決まりの「エルフ」「ドワーフ」と、聞きなじみのない「シー」という4種族の共同作業で世界を救う物語です。

エルフとドワーフは仲が悪いというのもよくある話っぽいですが、 夢幻の心臓2のこの2種族の関係は、ドワーフの台詞から察するにエルフが一方的にドワーフを嫌っている、そんな感じがします。

それでも、魔神からこの世界を救いたいという気持ちはどちらも同じで、協力し合って世界を救う。
素敵!!

始まりは人間の世界ですが、その後エルフの世界へ、最後は魔神の世界へと移ります。
異世界間の移動は不思議な扉で移動します。

エルフの世界では「エルフ」と「ドワーフ」、そして「シー」という(私は)聞きなじみのない種族も暮らしています。
人間の世界にも人間以外の種族はごく少数いて、このことから人間とその他の種族間で交流があることが分かります。 サルア城のゲストルームにもいますし。

こんな感じで物語は前作よりスケールアップしています。

物語もそうですが戦闘もスケールアップしていて、こちらが複数ということは当然あちらも複数です。 ゲーム開始時は主人公1人なので1対複数で戦わなければなりません。
どんなモンスターからもほぼ無傷で逃げられはするのですが、それでも強敵に襲われると精神衛生上よくありません。 ゲーム開始直後にガーゴイル、ましてやドラゴンに襲われたときの心情といったら......。

戦闘時のモンスター画像が大きのは前作と同じですが、これがまたカッコいいんです。 フィールド上でのシンボルでどのモンスターなのか分かるのも芸が細かいです。

翼のあるモンスターは地形に影響されないので、山や川を越えこちらへと向かってきます。 また、パーティが空を飛んでいるときも、普通のモンスターはこちらを襲ってこれませんが、翼のあるモンスターとは戦闘になります。
呑気に空を飛べるわけではないのです。

1人から5人になったことで常に表示されているステータスもかなり変わりました。
また、半角カナだらけの世界から平仮名カタカナの世界になったことで読みやすさも段違いに良くなりました。
......のですが、パーティメンバーの職業は表示していて欲しかったかなぁ、とは思います。
これは、仲間になるメンバーが多いのと、現在の職業が何なのか、つまり2つ目の能力をつけたかどうかが分かりにくかったためです。
生死を共にするメンバーなんだから、それくらい覚えておけよ!!
とは思うのですけれど(苦笑

「夢幻の心臓2」の世界では、アイテムを手放すことが出来ません。
パーティメンバーに渡すことは出来ても、「捨てる」ことや「売る」ことが出来ないため、 常にパーティメンバーの誰かがそのアイテムを持っていることになります。
アイテムを最大限に持っているときに他のメンバーからアイテムを渡されると「捨てますか?」と聞かれるのですが、手放すことが出来るのはその時くらいです。
アイテムを所持できる数にはかなり余裕があるのでさほど旅の支障にはなりませんが、 やはり余計なものを持っているというのはあまり気持ちいい事ではありません。
なので、わざと誰かのアイテムをいっぱいにして不要なものを渡して捨てさせる、ということをしてアイテム欄を整理したこともありますが、 面倒なので頻繁には行いません。
そして、こういうときに間違って重要アイテムを捨ててしまったりするんですよね、私は...。

でも、それにさえ救済があるのが凄いです。
「そのアイテムは捨てられません」というメッセージを出すのがドラクエですが、それ以前のゲームにはそんな親切設定は(多分)ありませんでした。 ウィザードリィは捨てても同じ場所に行けばまた取得できましたが、夢幻の心臓2では一度開けたとは宝箱はもう二度と出会えません。 それどころか、
「開けますか?」「荷物がいっぱいです、捨てますか?」「いいえ」「○○を諦めました」
となり、宝箱を開けて中身をその場で捨ててしまうという暴挙を平気でやってくれます。
これはお店でも同じで、買った品物を荷物がいっぱいのメンバーに持たせようとしると
「捨てますか?」「いいえ」「諦めますか?」となり、ここで「はい」と返答すると本当に捨ててしまいます。
お金は払っているのに、なんでだよ!
いあや、こちらの確認不足なのは重々承知してはいるのですが、それでもねぇ......。

でも、この重要アイテムの扱いを夢幻の心臓2は「捨てられない」というのとはもう少し違う設定にして、 「失われた道具を得られる場所を作った」というところが面白いです。
ちゃんと救済処置があります。

ゲーム開始初期は特にそんな風には思いませんでしたが、しばらくすると「敵多すぎ!!」と思うことがしばしばあります。
ゲーム開始時にはモンスターがいなくて困っていたのに、中盤にはモンスターが多すぎて困ってしまう状態に。 しかも、どいつもこいつもザコなので緊張感もなく面倒臭いだけ。 自分たちが強くなったら、弱いモンスターと戦っても経験値はあまり得られないので時間の無駄なんですが、それを強いられる苦痛。 「逃げる」よりも「スペースを押している」方が楽なのでとにかく戦うパーティ。
夢幻の心臓2には、戦略なんてほとんどありません。 あるのはただ体と体のぶつかり合いです。
呪文なんて最初の頃に使えるものは全くといっていいほど当てにならない上、主人公や戦士といった戦闘職でないとモンスターにまともにダメージを与えられないので、 修道士や魔術師なんて防御するのみ。
でも、それを選択するのすら面倒臭い。
Wizだと前衛後衛の概念があって後衛は「身を守る」が初期選択肢になっていたのでキー連打どころか押しっぱなしでもよかったのですが、夢幻の心臓2ではそうはいかず、 とにかく防御が面倒です。
かと言って術師が戦って攻撃されたら目も当てられません。
この辺、スリングだの弓だのの遠距離武器があるんだからもうちょっと何とかならなかったのかなぁ。
実は4・5人目が後衛扱いでそこからだと短距離武器は当てにくくなって遠距離武器が有効になる、なんてシステムなのかと思いましたが、そんなこともなく普通の武器で攻撃できます。 遠距離用の武器は一体何のためにあるんだ?

そして、これが一番の不満点。
特殊能力によって職業が決まるという発想は面白いと思うのですが、 その職業が差別化できているか、というと疑問符が残ります。 というか、疑問符しかありません。
魔法使いの呪文を覚えたいから「魔法」を身に着ける、僧侶の呪文を覚えたいから「神聖」を身に着ける、 そう思っていたのに、この2つの特殊能力を身に着けたキャラクタは呪文を覚えてくれません。

さらに、直接攻撃したいから「戦闘」をつけたい、と思っても元々「強さ」の能力が低いと「戦闘」の能力をつけるのがかなり遅くなります。 今ある能力を伸ばす、という感じの追加特殊能力システムなので、 早めに2つ目の特殊能力をつけたいのなら今持っている特殊能力と同系統、もしくは同じものをつけた方がいい、ということになります。

いったい何のための「能力2」なのか......。

それと、発売当時もさんざん言われてきたでしょうけれど、 見えない山地や森林は黒で塗りつぶし、角度によって見えないところも黒で表示、空を飛ぶ、船に乗る、異なる次元を行き来する。
う~ん、ウルティマですね。

なのですが、ここで終わらないのが夢幻の心臓2の凄いところなんです。
何が凄いか、まずは操作性の良いところ。
ウルティマはキーボードのほぼ全てを使います。 アルファベットの各文字にコマンドを設定してあるからです。
それが夢幻の心臓2ではテンキー(十字キー)と決定キーのみで行動できます。
つまり、そのままファミコンに移植出来てしまうくらいに操作性が良かったんです。
コマンド一覧を覚えなくても良いというのが快適。
梯子の上り下りに「Kだ」「Dだ」と選択するところを自動で移動したり、上下に移動できる梯子の場合だったら「上に行く?下に行く?」と聞いてくれたり、と非常に親切です。

ところで、僧侶系の職業は刃物を持てないというこだわりが素敵です。
エルフがドワーフを嫌っているのは、ドワーフ曰く「ドワーフはエルフの嫌いな鉄の道具を作るから嫌われているのだ」という台詞があるところも、 「鉄は呪文にうんたらかんたら~」という世界観を踏襲していて、こだわりを感じます。
なんですが、鉄はダメだけれど青銅はいいのか?
エルフの城でも村でも青銅の剣を売ってるじゃん。
金属全般がダメなわけではないのは分かります、銀はokでしょ?
銀のナイフ売ってるし、銀は魔除けにも使われそうだから。
この辺は私が不勉強なだけかもしれません。

物語終盤はちょっとやっつけ感がありましたが、それでも面白かったです!!
名作です、本当に。

ただ、やっぱり難点は職業かなぁ。
「神聖」をつけても僧侶の呪文を覚えないって意味ある?
Wiz風の「転職」ではなく「能力(特性)」による個性を出そうと思ったのかもしれませんが、これが全然機能していないこともあり、 職業は数多くありますが正直なところ違いが全然分かりませんでした。
さらにはシルヴィア(言霊士)の「神聖」に関しては未だによく分からなくて、他の仲間が2つめの能力をつけられる状況でもつけられませんでした。
特別な条件が必要なのか?
とも思いましたが、例え「神聖」をつけたとしても呪文を覚えるわけではないので探求のモチベーションが上がらず放置。
能力制度はもうちょっと、というかもっと何とかして欲しかったですね。

それと、シルヴィアが特定の条件ですべての呪文を使える、という設定は一体何だったのか?
自分がよく見ていなかったからなのかもしれませんが、そんな状況は無かったように思います。
もしかして、ラスボス戦?
シルヴィアは防御要員だったからなぁ。

あ、細かい事ですが誤字脱字を発見。
エルフ:魔神は「し」ぶんの世界をもっている
また、こちらは誤字脱字ではありませんが
「まじんの しろが すがたが あらわれた」
これって、
魔神の 城「の」 姿が 現れた
もしくは
魔神の 城「が」 姿「を」 現わした
だと思うんです。

自分の事は棚に上げて、重箱の隅をつつく性格ですみません...。

素晴らしい時間をありがとうございました。
見た目はウルティマに激似ですが、中身は「夢幻の心臓2」という素晴らしいゲームでした。