探偵 神宮寺三郎 時の過ぎゆくままに...

プロローグ

公園に生い茂っている樹木の葉、 というのは、やっぱり緑色をしていたのだと、 この季節になると改めて思い出す。

小学生の頃に風景を写生する授業では、 空の色は青、太陽は赤、木立は緑、に決まっていた。
その色の絵の具だけが減るのが早かったものだ……。

オレはタバコに火をつけた。

ふう……。

おや?
向こうから来るのは……。
くまさん……。

「おう! 何をしてるんだ?

この人は新宿淀橋署の熊野警部だ。
時々仕事の世話をしてくれるのでとても助かっている。
性格は極めて頑固である……。

「何をぶつぶつ言ってるんだ?
暇そうだな。

くまさんだって……。

「なーにを言うか!
それより少し前にようこくんと会ったぞ。
キミを探していたようだが。

じゃあ、そろそろ戻るか。

「なんだ、行ってしまうのか。
じゃ、またいつか呑みに行こうか。連絡するからな。


ここはオレの事務所だ。
ようこくんはまだ戻っていないな。

オレはタバコに火をつけた。
ふう……。

おっ、誰か来る……。

「もう! 先生!
いつ戻ったんですか!

彼女がオレの助手のみそのようこ。
カンが鋭く、彼女のおかげで解決することが出来た仕事も少なくない。
これといって欠点が見当たらない優れた助手だ。

ただ一つ……。

「先生! 忘れたんですか?
タバコを吸うときは換気扇を回して!

……この母親のような態度……。

「何か?

いや、別に……。

「それならいいんですけど。

……という人々に囲まれて オレは楽しくやっているわけだ。

えっ?
オレ?
今さらそれは無いじゃないか……。

 
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